名目金利だけを見ていると判断を誤る

銀行の定期預金金利が年 0.3% と表示されていても、インフレ率が年 2% であれば、実質的な購買力は年 1.7% ずつ目減りしています。名目金利とは額面上の利率であり、物価変動を考慮していません。一方、実質金利はインフレ率を差し引いた「本当の利回り」です。フィッシャー方程式では「実質金利 ≒ 名目金利 - インフレ率」と近似されます。

1990 年代の日本では名目金利が 5% を超えていましたが、当時のインフレ率は 1-2% 程度だったため、実質金利は 3-4% ありました。2023 年時点では名目金利が 0.002% 程度の普通預金に対し、インフレ率が 3% を超える局面もあり、実質金利はマイナス 3% 近くに沈んでいます。預金しているだけで資産の実質価値が年 3% ずつ失われている計算です。

実質金利で投資商品を正しく評価する

投資信託の過去リターンが年 8% と表示されていても、同期間のインフレ率が 2% なら実質リターンは約 6% です。海外資産に投資する場合は、投資先国のインフレ率と為替変動も考慮する必要があります。米国株式の名目リターンが年 10% でも、円安が進行して為替差益が上乗せされている場合、円ベースの実質リターンは見かけほど高くない可能性があります。

債券投資では実質金利の概念が特に重要です。債券投資の入門書で解説されているように、物価連動国債 (インフレ連動債) は実質金利を直接提供する商品であり、インフレヘッジの手段として機能します。

インフレ時代の資産防衛に実質金利の視点を

実質金利がマイナスの環境では、現金や低金利の預金に資産を置いておくこと自体がリスクです。インフレ率を上回るリターンを得るためには、株式、不動産、コモディティなどの実物資産への分散投資が有効です。過去 100 年の米国データでは、株式の実質リターンは年平均 6.5-7% で、インフレを大きく上回ってきました。

資産配分を考える際は、名目リターンではなく実質リターンで比較することが重要です。インフレ対策と資産防衛の書籍では、実質リターンを基準にしたポートフォリオ構築の手法が紹介されています。

実質金利を踏まえた資産配分の見直し方

実質金利がマイナスの環境では、預貯金の比率を必要最低限に抑え、インフレに強い資産クラスへの配分を増やすことが合理的です。具体的には、生活費 6 ヶ月分を普通預金に確保した上で、残りを株式インデックスファンドや不動産投資信託 (REIT) に振り向ける方法が考えられます。過去 30 年の日本のデータでは、株式の実質リターンは年平均 4-5% で預金を大きく上回っています。

次のステップとして、自分のポートフォリオの名目リターンからインフレ率を差し引き、実質リターンを計算してみてください。実質リターンがマイナスになっている資産があれば、配分の見直しを検討する時期です。複利計算ツールを使えば、インフレ率を考慮した将来の資産額を簡単に試算できます。