インフレが現金の価値を蝕む
普通預金の金利が 0.1% でインフレ率が 2% の場合、現金の実質的な価値は毎年約 1.9% ずつ目減りしています。1,000 万円の預貯金は、10 年後には名目上は約 1,010 万円に増えますが、購買力ベースでは約 827 万円相当に減少します。つまり、「何もしない」という選択自体が、年間約 19 万円のコストを払っているのと同じです。
日本では長らくデフレが続いたため「現金は安全」という感覚が根強いですが、2022 年以降はインフレ率が 2〜4% で推移しています。この環境が続けば、10 年間で現金の購買力は 20〜30% 失われます。現金を「リスクゼロの資産」と考えるのは、インフレ環境下では誤りです。
インフレ率別の購買力シミュレーション
1,000 万円の預貯金 (金利 0.1%) の購買力が、インフレ率によってどう変化するかを見てみましょう。インフレ率 1% の場合: 10 年後の購買力は約 906 万円、20 年後は約 821 万円。インフレ率 2% の場合: 10 年後は約 827 万円、20 年後は約 684 万円。インフレ率 3% の場合: 10 年後は約 754 万円、20 年後は約 569 万円です。
インフレ率 3% が 20 年間続くと、1,000 万円の購買力は約 431 万円分も失われます。これは「見えないコスト」であり、預金通帳の残高は減っていないため気づきにくいのが厄介です。実質的な資産価値を守るには、インフレ率を上回るリターンで運用する必要があります。
投資していれば得られたリターン
1,000 万円を預貯金ではなく年利 5% で運用していた場合、10 年後には約 1,629 万円、20 年後には約 2,653 万円になります。預貯金との差額は 10 年で約 619 万円、20 年で約 1,643 万円です。これが「現金で持ち続けることの機会損失」です。
もちろん投資にはリスクがあり、年利 5% が保証されているわけではありません。しかし、全世界株式インデックスの過去 30 年の平均リターンは年 7% 前後であり、15 年以上の保有で元本割れした期間はほぼありません。長期で使わない資金を預貯金に眠らせておくことは、確実にインフレで目減りするリスクを取っていることになります。インフレと資産防衛の書籍も参考になります。
適切な現金比率の考え方
現金をゼロにすべきではありません。生活防衛資金 (生活費の 6〜12 ヶ月分) と、1〜2 年以内に使う予定のある資金は預貯金で確保すべきです。それを超える余剰資金は、リスク許容度に応じて投資に回すのが合理的です。
具体的な目安として、手取り月収 30 万円の場合、生活防衛資金は 180〜360 万円です。これに加えて、車の購入や旅行など 1〜2 年以内の大型出費の予定額を現金で確保します。それ以外の預貯金は、投資に回すことで機会損失を減らせます。資産運用の入門書も参考になります。
ネクストアクション - 余剰現金を投資に回す
まず、現在の預貯金残高から生活防衛資金と近い将来の使途が決まっている金額を差し引き、余剰現金を算出しましょう。余剰現金がある場合は、NISA 口座で全世界株式インデックスファンドに投資することを検討してください。一括投資が不安なら、6〜12 ヶ月かけて分割投資する方法もあります。
当サイトのシミュレーターで、現在の預貯金を投資に回した場合の将来の資産額を確認してみてください。「何もしないコスト」を数字で可視化すれば、投資を始める動機が明確になるはずです。