ポケモンカードの驚異的な値上がり

1996 年に発売された初版リザードンのカードは、当時 1 パック約 300 円のカードゲームに入っていました。それが 2024 年現在、美品の初版リザードンは数十万円〜数百万円で取引されています。仮に 300 円が 30 万円になったとすると、28 年間で 1,000 倍。複利の式で計算すると、30 万 = 300 × (1 + r)^28 なので、r = (1000)^(1/28) - 1 ≒ 0.288。年率約 29% です。

年率 29% は驚異的な数字です。世界最高の投資家ウォーレン・バフェットの生涯リターンが年率約 20% ですから、それを大きく上回っています。「じゃあポケモンカードに投資すればいいじゃん」と思うかもしれませんが、話はそう単純ではありません。

「生存者バイアス」の罠

リザードンが 1,000 倍になったのは事実です。でも、同じ時期に発売された何千種類ものカードのうち、値上がりしたのはごく一部です。大半のカードは今でも数円〜数十円の価値しかありません。「リザードンが 1,000 倍になった」という話だけを聞くと、ポケモンカード全体が儲かるように感じますが、実際には「たまたま当たりを引いた人の話」だけが目立っているのです。これを「生存者バイアス」と呼びます。

一方、S&P 500 (アメリカの主要 500 社の株価指数) に投資した場合、1996 年から 2024 年の 28 年間で約 10 倍になっています。年率約 8.7%。リザードンの 29% には遠く及びませんが、S&P 500 は「500 社全体」の平均なので、特定の 1 社を当てる必要がありません。

コレクション投資 vs 金融投資

ポケモンカード、スニーカー、ヴィンテージ時計などの「コレクション投資」と、株式や投資信託などの「金融投資」には決定的な違いがあります。コレクション投資は、保有中に配当や利息を生みません。値上がりだけが利益の源泉です。保管コスト (湿度管理、防犯) がかかります。流動性が低い (売りたいときにすぐ売れるとは限らない)。偽物リスクがあります。そして何より、どのアイテムが値上がりするか事前に予測するのは極めて困難です。 ポケモンカードの世界は純粋に楽しむのが一番です。

楽しむのと投資するのは分けて考える

ポケモンカードを集めるのは楽しい趣味です。でも「投資として儲かるから」という理由で買うのは危険です。趣味として楽しみつつ、資産形成は株式インデックスファンドで堅実に行う。これが最も合理的な戦略です。リザードンの 1,000 倍は夢がありますが、S&P 500 の 10 倍は「ほぼ全員が享受できる現実」です。夢を追うのは趣味で、現実を積み上げるのは投資で。この使い分けができれば、お金との付き合い方は格段にうまくなります。