退職後に必要な収入額を見積もる

退職後の生活費は現役時代の 70-80% が目安とされますが、実際には個人差が大きいです。総務省の家計調査によると、65 歳以上の夫婦世帯の平均支出は月約 25-28 万円です。ここに医療費の増加、住宅の修繕費、趣味や旅行の費用を加えると、ゆとりある老後には月 35-38 万円が必要とされています。一方、公的年金の平均受給額は夫婦合計で月 22-25 万円程度であり、毎月 10-15 万円の不足が生じます。

この不足分を 30 年間 (65 歳から 95 歳) 補填するには、3,600-5,400 万円の資産が必要です。いわゆる「老後 2,000 万円問題」は最低限の試算であり、ゆとりある生活を望むなら 4,000-5,000 万円の準備が現実的な目標です。退職金がある場合はその分を差し引けますが、退職金の平均額は大企業で約 2,000 万円、中小企業で約 1,000 万円と、全額をカバーするには不十分です。

3 つの収入源を組み合わせる設計手法

退職後の収入は「公的年金」「配当・利子収入」「資産の取崩し」の 3 本柱で設計します。公的年金は繰下げ受給 (最大 75 歳まで) を選択すると、1 か月あたり 0.7% 増額され、70 歳まで繰り下げれば 42% 増、75 歳なら 84% 増になります。65 歳時点で月 15 万円の年金が、70 歳繰下げで約 21.3 万円に増えるため、他の収入源で 65-70 歳の生活費を賄えるなら繰下げは有力な選択肢です。

配当収入は、高配当株式や REIT を組み合わせることで安定的なキャッシュフローを生み出せます。配当金生活とインカム投資の書籍で紹介されているように、配当利回り 3-4% のポートフォリオを 3,000 万円分保有すれば、年間 90-120 万円 (月 7.5-10 万円) の配当収入が得られます。ただし、配当は減配リスクがあるため、複数の銘柄やセクターに分散することが重要です。

資産取崩しの最適なペースを決める

資産の取崩しでは「4% ルール」が広く知られています。これは退職時の資産の 4% を初年度に取り崩し、以降はインフレ率に応じて取崩し額を調整する方法で、米国の研究では 30 年間資産が枯渇しない確率が 95% 以上とされています。ただし、この研究は米国の過去データに基づいており、日本の低金利環境では 3-3.5% に引き下げるのが安全です。

取崩し順序も重要な戦略です。一般的には、課税口座の資産を先に取り崩し、NISA 口座や iDeCo の非課税資産は後に残すことで、税負担を最小化できます。資産取崩しとリタイアメントの書籍では、年齢や市場環境に応じた柔軟な取崩し戦略が詳しく解説されています。

退職後の収入設計を今から始めるためのステップ

退職後の収入設計は、退職の 10-15 年前から始めるのが理想です。まず「ねんきんネット」で自分の年金見込額を確認し、退職後の月額収入のベースラインを把握します。次に、退職後の想定支出 (月額) を算出し、年金との差額が毎月いくらになるかを計算します。この差額 × 12 か月 × 30 年 (65-95 歳) が、退職までに準備すべき資産の目安です。

具体的なアクションとして、40 代なら iDeCo と NISA を併用した積立投資を最大化し、50 代後半からは徐々にポートフォリオを安定資産 (債券、高配当株) にシフトしていきます。退職 5 年前には、年金の繰下げ受給をするかどうかの判断材料を整理し、65-70 歳の生活費を賄える現金・債券を確保しておきましょう。退職後の収入源を「年金」「配当」「取崩し」の 3 本柱で設計し、どの柱がいつからいくら入るかを表にまとめることで、安心感のあるリタイアメントプランが完成します。