なぜファンドの平均成績は実態より良く見えるのか
投資信託のカテゴリ平均リターンを見ると、多くのアクティブファンドが市場平均に近い成績を残しているように見えます。しかし、この数字には重大な歪みが含まれています。成績不振で繰上償還 (運用終了) されたファンドや、他のファンドに吸収合併されたファンドのデータが統計から除外されているのです。これが生存者バイアスです。
米国の調査では、過去 20 年間に設定されたアクティブファンドの約 40-50% が途中で消滅しています。消滅するファンドは成績不振のものが大半であるため、生き残ったファンドだけの平均は実態よりも年 1-2% 程度高く表示されます。日本でも同様の傾向があり、投資信託協会のデータによると、毎年数百本のファンドが繰上償還されています。
生存者バイアスがファンド選びに与える影響
ファンドランキングや過去の運用成績を基にファンドを選ぶ際、生存者バイアスは二重の罠を仕掛けます。第一に、カテゴリ平均が実態より高いため、平均を上回るファンドの数が実際より少なく見えます。第二に、過去の好成績ファンドが将来も好成績を維持する確率は統計的に低く、「過去 5 年のトップファンド」が次の 5 年もトップに留まる確率は 20% 以下というデータがあります。
この問題を回避するには、個別ファンドの過去成績に過度に依存しない投資判断が重要です。インデックス投資の解説書で論じられているように、低コストのインデックスファンドは生存者バイアスの影響を受けにくく、長期的に大多数のアクティブファンドを上回る成績を残しています。
バイアスを意識した冷静な投資判断のために
生存者バイアスは投資信託だけでなく、ヘッジファンド、個別株のスクリーニング、投資戦略のバックテストなど、あらゆる投資データに潜んでいます。バックテストで過去に好成績だった戦略が実運用で機能しない原因の一つは、テスト対象に上場廃止銘柄が含まれていないことです。過去データを使った分析では、常に「消えたデータ」の存在を意識する必要があります。
投資判断においては、成功事例だけでなく失敗事例にも目を向けることが重要です。行動ファイナンスと投資心理の書籍では、生存者バイアスを含む様々な認知バイアスが投資判断に与える影響と、その対処法が体系的に解説されています。
生存者バイアスに惑わされないファンド選びの実践法
生存者バイアスを回避するための具体的なアクションは 3 つあります。第一に、ファンド選びでは過去の運用成績よりも信託報酬 (コスト) を重視することです。コストは将来のリターンに対して確実にマイナスに作用する唯一の予測可能な要素であり、信託報酬が年 0.1% のファンドと 1.5% のファンドでは、30 年間で資産額に 20% 以上の差が生まれます。
第二に、ファンドの純資産総額と運用期間を確認し、繰上償還リスクの低いファンドを選ぶことです。純資産総額が 100 億円以上、運用期間が 5 年以上のファンドは安定性が高いと判断できます。第三に、特定のファンドに集中投資せず、インデックスファンドを中心に据えることで、個別ファンドの消滅リスクを最小化できます。これらの基準を投資判断のチェックリストとして活用し、感覚ではなくデータに基づいた選択を心がけましょう。