CAPM の定義と計算式
CAPM (Capital Asset Pricing Model、資本資産価格モデル) とは、個別資産の期待リターンをリスクフリーレート (無リスク金利) と市場リスクプレミアムから算出する理論モデルです。1960 年代にウィリアム・シャープらによって開発され、現代ファイナンス理論の基礎となっています。計算式は「期待リターン = 無リスク金利 + β × (市場リターン - 無リスク金利)」です。
この式の各要素を具体的に見ると、無リスク金利は国債の利回り (日本では 10 年国債利回り、約 0.5-1.0%)、市場リターンは株式市場全体の期待リターン (歴史的に年 7-10%)、β は個別銘柄の市場感応度です。市場リターンから無リスク金利を引いた部分を「市場リスクプレミアム」と呼び、投資家が株式市場のリスクを取ることで得られる追加リターンを表します。
具体的な計算例と実務での活用
具体例として、無リスク金利 1%、市場リターン 8%、ベータ 1.3 の銘柄の期待リターンを計算すると、1% + 1.3 × (8% - 1%) = 10.1% となります。この銘柄の実際のリターンが 12% であれば、アルファは 1.9% (12% - 10.1%) です。逆に実際のリターンが 8% であれば、アルファは -2.1% で、リスクに見合うリターンを獲得できていないと判断されます。
実務では、CAPM は企業の資本コスト (WACC) の算出に広く使われています。企業が新規プロジェクトの投資判断を行う際、CAPM で算出した株主資本コストを割引率として使い、プロジェクトの正味現在価値 (NPV) を計算します。また、M&A における企業価値評価 (DCF 法) でも、CAPM は割引率の算出に不可欠なツールです。
CAPM の限界とよくある誤解
CAPM の最大の限界は、現実の市場が理論の前提条件を満たさない点です。CAPM は「投資家は合理的」「取引コストがゼロ」「情報は完全に共有される」「リターンは正規分布に従う」などの仮定に基づいていますが、現実にはいずれも成立しません。ファーマ=フレンチの 3 ファクターモデルは、CAPM のベータだけでは説明できないリターンの差異を、企業規模と簿価時価比率の 2 つの追加ファクターで補完しています。 CAPM と投資理論の専門書も参考になります
よくある誤解は「CAPM で計算した期待リターンが実際に得られる」という思い込みです。CAPM はあくまで理論上の均衡モデルであり、実際のリターンは企業固有の要因、マクロ経済環境、投資家心理など多くの要素に左右されます。CAPM は投資判断の出発点として有用ですが、唯一の判断基準にすべきではありません。