カウンターパーティリスクの定義と発生場面

カウンターパーティリスク (counterparty risk) とは、金融取引の相手方 (カウンターパーティ) が契約上の義務 (支払い、資産の引き渡しなど) を履行できなくなるリスクを指します。「取引先信用リスク」とも呼ばれ、デリバティブ取引、レポ取引、証券貸借取引など、取引所を介さない相対取引 (OTC 取引) で特に重要なリスクです。

カウンターパーティリスクは、銀行間の資金取引、企業間の掛け取引、保険契約、スワップ契約など、あらゆる二者間の金融契約に存在します。個人投資家にとっても、証券会社や FX 業者の破綻リスクとして身近な問題です。日本では投資者保護基金により証券会社の破綻時に 1 人あたり 1,000 万円まで補償されますが、それを超える資産は保護されません。

リーマンショックとカウンターパーティリスク

カウンターパーティリスクが世界的な金融危機を引き起こした最も有名な事例が、2008 年のリーマンショックです。リーマン・ブラザーズは約 6,000 億ドルの資産を持つ世界第 4 位の投資銀行でしたが、サブプライムローン関連の損失により破綻しました。リーマンとデリバティブ取引を行っていた世界中の金融機関が巨額の損失を被り、金融システム全体が機能不全に陥りました。

リーマンショック時に特に問題となったのは、CDS (クレジット・デフォルト・スワップ) 市場でのカウンターパーティリスクです。AIG (アメリカン・インターナショナル・グループ) は約 4,400 億ドルの CDS を販売していましたが、支払い能力を失い、米国政府が約 1,820 億ドルの公的資金を投入して救済しました。一社の破綻が連鎖的に他の金融機関に波及する「システミックリスク」の恐ろしさを世界に示しました。

実務での管理手法とよくある誤解

リーマンショック後、カウンターパーティリスクの管理は大幅に強化されました。主な対策として、中央清算機関 (CCP) を通じたデリバティブ取引の義務化、担保 (証拠金) の差し入れ義務の強化、CVA (信用評価調整) による取引相手の信用リスクの時価評価などが導入されました。バーゼル III 規制では、カウンターパーティリスクに対する自己資本の積み増しが求められています。 信用リスク管理の実務書も参考になります

個人投資家にとってのよくある誤解は「大手金融機関なら破綻しない」という過信です。リーマン・ブラザーズは 158 年の歴史を持つ名門投資銀行でしたが、わずか数カ月で破綻しました。個人投資家ができる対策として、複数の証券会社に資産を分散する、投資者保護基金の補償範囲を理解する、取引先の財務健全性を定期的に確認するなどが挙げられます。