経常収支の定義と 4 つの構成要素

経常収支 (current account) とは、一国の対外的な経済取引の収支を示す指標で、貿易収支、サービス収支、第一次所得収支 (投資収益)、第二次所得収支 (経常移転) の 4 つの項目から構成されます。経常収支が黒字であれば、その国は海外から稼いだ金額が海外に支払った金額を上回っていることを意味し、対外純資産が増加します。

日本の経常収支は 2023 年度に約 25.3 兆円の黒字を記録しました。内訳を見ると、貿易収支は約 6.5 兆円の赤字ですが、第一次所得収支 (海外投資からの配当・利息収入) が約 34.5 兆円の大幅黒字であり、これが貿易赤字を補って余りある構造になっています。日本は「貿易立国」から「投資立国」へと構造転換が進んでいます。

日本の経常収支の構造変化

1980-2000 年代の日本は、自動車や電子機器の輸出による貿易黒字が経常黒字の主因でした。しかし 2011 年以降、製造業の海外移転とエネルギー輸入の増加により貿易収支は赤字基調に転じました。代わりに、過去の海外投資から得られる配当・利息収入 (第一次所得収支) が経常黒字の柱となっています。

2023 年度の第一次所得収支約 34.5 兆円は、日本企業の海外子会社からの配当金、海外債券の利息収入、海外不動産の賃料収入などで構成されています。日本の対外純資産は約 418 兆円 (2023 年末) で、33 年連続世界一の債権国です。この巨額の海外資産が生み出す投資収益が、日本の経常黒字を支えています。

投資家にとっての意味とよくある誤解

経常収支は為替レートの長期的なトレンドに影響を与えます。経常黒字国の通貨は長期的に上昇圧力を受け、経常赤字国の通貨は下落圧力を受ける傾向があります。ただし、日本は経常黒字にもかかわらず 2022-2024 年に大幅な円安が進行しました。これは日米金利差の拡大による資本流出が、経常黒字による通貨高圧力を上回ったためです。 国際収支の仕組みを学べる書籍も参考になります

よくある誤解は「経常赤字の国は危険」という一面的な見方です。米国は長年経常赤字を計上していますが、世界中の投資家がドル資産を購入するため、資本収支の黒字で経常赤字をファイナンスしています。問題になるのは、経常赤字を外貨建て債務で賄っている新興国のケースで、資本流出が起きると通貨危機に発展するリスクがあります。