確定給付年金の定義と仕組み

確定給付年金 (Defined Benefit、DB) とは、加入期間や給与水準に基づいて将来の年金給付額があらかじめ確定している年金制度です。運用リスクは企業 (事業主) が負担し、運用成績が悪くても約束された給付額は変わりません。日本では確定給付企業年金法に基づく「確定給付企業年金 (DB)」として運営されており、2024 年時点で約 940 万人が加入しています。

DB の給付額は一般的に「平均給与 × 支給率 × 加入年数」で計算されます。たとえば、平均給与 40 万円、支給率 1.5%、加入年数 30 年の場合、年金月額は 18 万円 (40 万円 × 1.5% × 30 年) です。企業は将来の給付に必要な資金を年金資産として積み立て、専門の運用機関が運用します。積立不足が生じた場合、企業は追加拠出を求められます。

確定拠出年金 (DC) との比較

DB と DC の最大の違いは「リスクの所在」です。DB では運用リスクを企業が負担するため、従業員は将来の給付額が保証されます。一方、DC では運用リスクを従業員が負担するため、運用成績によって受取額が変動します。DB は従業員にとって安心感がありますが、企業にとっては積立不足のリスクが経営を圧迫する可能性があります。

近年、日本企業の間で DB から DC への移行が進んでいます。低金利環境で予定利率を達成することが困難になり、積立不足が拡大したためです。2000 年代には多くの企業が DB の予定利率を 5.5% から 2-3% に引き下げ、それでも積立不足が解消されないケースが相次ぎました。従業員にとっては、DB の安定性を失う代わりに、DC のポータビリティ (転職時に資産を持ち運べる) を得るトレードオフです。

よくある誤解と実務的な注意点

よくある誤解は「DB なら絶対に約束された金額がもらえる」という考えです。企業が倒産した場合、年金資産が給付債務を下回っていれば、給付額が減額される可能性があります。実際に、JAL (日本航空) の経営破綻時には OB の年金が最大 53% 減額されました。また、企業の経営判断で DB 制度自体が廃止・縮小されるケースもあります。 企業年金と退職金の書籍も参考になります

実務的には、自分の勤務先が DB と DC のどちらを採用しているか、または両方を併用しているかを把握することが重要です。DB のみの場合は企業の財務健全性に注意を払い、DC のみの場合は自分自身の運用スキルを高める必要があります。いずれの場合も、公的年金と企業年金だけでは老後資金が不足する可能性があるため、NISA や iDeCo を活用した自助努力が求められます。