相続税の基本的な仕組みと基礎控除

相続税 (inheritance tax) とは、被相続人 (亡くなった方) の財産を相続や遺贈によって取得した人に課される税金です。日本の相続税は「遺産取得課税方式」を基本としつつ、法定相続分に応じた税額を算出する独自の計算方法を採用しています。基礎控除額は「3,000 万円 + 600 万円 × 法定相続人の数」で計算され、遺産総額がこの金額以下であれば相続税はかかりません。

たとえば、法定相続人が配偶者と子 2 人の計 3 人の場合、基礎控除額は 4,800 万円 (3,000 万円 + 600 万円 × 3) です。遺産総額が 1 億円であれば、課税対象は 5,200 万円 (1 億円 - 4,800 万円) となります。2015 年の税制改正で基礎控除額が 40% 引き下げられた結果、課税対象者の割合は約 4% から約 9% に増加し、相続税は一部の富裕層だけの問題ではなくなりました。

税率と具体的な計算例

相続税の税率は 10% から最高 55% の累進課税です。課税遺産総額 1,000 万円以下は 10%、3,000 万円以下は 15%、5,000 万円以下は 20%、1 億円以下は 30%、2 億円以下は 40%、3 億円以下は 45%、6 億円以下は 50%、6 億円超は 55% です。配偶者には「配偶者の税額軽減」があり、法定相続分または 1 億 6,000 万円のいずれか大きい金額まで非課税となります。

具体例として、遺産 2 億円、法定相続人が配偶者と子 1 人の場合を計算します。基礎控除 4,200 万円を差し引いた 1 億 5,800 万円が課税対象です。法定相続分 (各 1/2) で按分すると各 7,900 万円。税率表に当てはめると各約 1,580 万円、合計約 3,160 万円が相続税総額です。配偶者が法定相続分を取得すれば配偶者の税額はゼロとなり、子が約 3,160 万円の半額 1,580 万円を負担します。

よくある誤解と実務的な対策

よくある誤解は「不動産は時価で評価される」という考えです。相続税の不動産評価は、土地は路線価 (時価の約 80%)、建物は固定資産税評価額 (時価の約 50-70%) で行われるため、現金で保有するよりも不動産で保有する方が相続税評価額が低くなります。さらに賃貸物件であれば借地権割合や借家権割合の控除が適用され、評価額はさらに下がります。 相続税対策の実務書も参考になります

実務的な対策として、生前贈与の活用が広く行われています。年間 110 万円の暦年贈与非課税枠を利用し、10 年間で子 2 人に贈与すれば 2,200 万円を非課税で移転できます。ただし、2024 年以降は相続開始前 7 年以内の贈与が相続財産に加算されるため、早期からの計画的な贈与が重要です。生命保険の非課税枠 (500 万円 × 法定相続人の数) も有効な対策の一つです。