現代ポートフォリオ理論の基本概念

現代ポートフォリオ理論 (Modern Portfolio Theory、MPT) とは、1952 年にハリー・マーコウィッツが発表した投資理論で、複数の資産を組み合わせることでリスクを低減しながら期待リターンを最大化できることを数学的に証明しました。この功績により、マーコウィッツは 1990 年にノーベル経済学賞を受賞しています。

MPT の核心は「ポートフォリオのリスクは個別資産のリスクの単純合計ではない」という発見です。相関の低い資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスク (標準偏差) を個別資産のリスクよりも小さくできます。たとえば、株式と債券は一般的に負の相関を持つため、両方を保有することで一方の下落を他方の上昇が部分的に相殺します。

分散効果の具体的な数値例

分散効果を数値で示します。株式 A (期待リターン 10%、リスク 20%) と株式 B (期待リターン 8%、リスク 15%) の相関係数が 0.3 の場合、50:50 で組み合わせたポートフォリオの期待リターンは 9% (加重平均) ですが、リスクは約 14.3% となり、単純平均の 17.5% より大幅に低下します。相関係数が -0.5 であれば、リスクは約 9.4% まで低下し、分散効果がさらに顕著になります。

実際の資産クラス間の相関を見ると、日本株と米国株の相関は約 0.6-0.7、株式と国内債券の相関は約 -0.1-0.2、株式と金の相関は約 0-0.1 です。GPIF の基本ポートフォリオ (国内株式 25%、外国株式 25%、国内債券 25%、外国債券 25%) は、MPT の考え方に基づいて設計されており、2001 年から 2023 年の年平均リターンは約 3.9% を達成しています。

MPT の限界とよくある誤解

MPT の限界として、リターンが正規分布に従うという仮定が現実と乖離する点があります。実際の市場では、正規分布が予測するよりもはるかに頻繁に極端な値動き (ファットテール) が発生します。また、金融危機時には通常は相関の低い資産同士の相関が急上昇し、分散効果が失われる「相関の収束」が起こります。2008 年のリーマンショックでは、株式、不動産、コモディティがほぼ同時に下落しました。 ポートフォリオ理論の入門書も参考になります

よくある誤解は「MPT に従えばリスクをゼロにできる」という考えです。MPT で除去できるのは個別銘柄固有のリスク (非システマティックリスク) のみであり、市場全体のリスク (システマティックリスク) は分散では除去できません。また、最適ポートフォリオの算出には将来の期待リターン・リスク・相関の推定が必要ですが、これらの推定値は不確実であり、推定誤差がポートフォリオの最適性を損なう可能性があります。