テーパリングの定義と実施プロセス
テーパリング (tapering) とは、中央銀行が量的緩和 (QE) で行っている資産購入の規模を段階的に縮小していくプロセスを指します。英語の taper (先細りにする) に由来し、金融緩和の「出口戦略」の第一段階に位置づけられます。量的緩和の突然の停止は市場に大きなショックを与えるため、数カ月から 1 年程度かけて段階的に購入額を減らしていきます。
テーパリングの典型的なプロセスは、まず中央銀行が将来のテーパリング開始を示唆 (フォワードガイダンス) し、次に具体的な縮小スケジュールを発表、そして毎月の購入額を段階的に減額していきます。FRB は 2021 年 11 月に月額 1,200 億ドルの資産購入を毎月 150 億ドルずつ減額するテーパリングを開始し、2022 年 3 月に購入を終了しました。
テーパータントラムと市場への影響
テーパリングが市場に与える影響を象徴する出来事が、2013 年 5 月の「テーパータントラム (taper tantrum)」です。当時の FRB 議長バーナンキが議会証言でテーパリングの可能性に言及しただけで、米国 10 年国債利回りは約 1.6% から 3.0% に急上昇し、S&P 500 は約 6% 下落、新興国市場からは大規模な資金流出が発生しました。
2021-2022 年のテーパリングでは、FRB が事前に十分なコミュニケーションを行ったため、2013 年ほどの混乱は生じませんでした。しかし、テーパリング開始後の 2022 年には S&P 500 が約 19% 下落し、米国 10 年国債利回りは約 1.5% から 4.2% に上昇しました。テーパリングは金融引き締めの始まりを意味するため、株式・債券の両方に下落圧力がかかります。
投資家が注意すべきポイント
テーパリングに関するよくある誤解は「テーパリング = 金融引き締め」という等式です。テーパリングは資産購入の「ペースを落とす」だけであり、購入自体は継続しています。つまり、金融緩和の度合いが弱まるだけで、引き締めに転じるわけではありません。本格的な引き締めは、テーパリング終了後の利上げや資産売却 (量的引き締め、QT) の段階です。 金融政策と投資戦略の関係を学べる書籍も参考になります
実務的に重要なのは、テーパリングの「予告」段階から市場は反応し始めるという点です。中央銀行の政策決定会合の声明文、議事録、総裁の記者会見での発言を注視し、テーパリングの時期や規模に関するヒントを読み取ることが求められます。テーパリング局面では、金利上昇に弱い成長株 (グロース株) から、金利上昇に強い金融株やバリュー株へのローテーションが起きやすい傾向があります。