損失と回復の非対称性
複利は資産を増やす強力な味方ですが、損失の局面では逆に働きます。100万円が50%下落すると50万円になりますが、50万円を100万円に戻すには50%ではなく100%のリターンが必要です。これが負の複利効果の核心です。損失率と回復に必要なリターンの関係は非線形で、10%の損失には11.1%、20%の損失には25%、30%の損失には42.9%、50%の損失には100%の回復が必要になります。
なぜ大きな損失を避けるべきか
この非対称性は、投資において「大きく勝つこと」よりも「大きく負けないこと」のほうが重要であることを数学的に証明しています。年利+20%と-15%を交互に繰り返すポートフォリオは、一見すると平均+2.5%ですが、実際の複利リターンは年率+1.0%にしかなりません。ボラティリティが高いほど、算術平均と幾何平均 (実際のリターン) の乖離が大きくなります。これを「ボラティリティの足かせ (volatility drag)」と呼びます。
実務への応用
負の複利効果を理解すると、分散投資とリスク管理の重要性が腑に落ちます。ポートフォリオの最大ドローダウンを30%以内に抑えることを目標にすれば、回復に必要なリターンは43%で済みます。50%のドローダウンを許容すると100%の回復が必要になり、回復までの期間が大幅に延びます。ストップロスの設定、適切な分散、レバレッジの抑制は、すべて負の複利効果を最小化するための手段です。