取得原価利回りの定義
取得原価利回り (Yield on Cost, YOC) は、現在の年間配当金額を株式の取得原価で割った値です。計算式は YOC = 現在の年間配当金 ÷ 取得原価 × 100 です。通常の配当利回りが現在の株価を分母にするのに対し、YOC は自分が実際に支払った価格を分母にします。
長期保有で YOC が高まる仕組み
具体例で考えます。2010 年にある銘柄を 1 株 1,000 円で購入し、当時の年間配当は 30 円 (配当利回り 3%) でした。その後、企業が毎年 7% ずつ増配を続けた場合、2025 年の年間配当は 30 × 1.07^15 ≒ 83 円になります。現在の株価が 3,000 円に上昇していれば、通常の配当利回りは 83 ÷ 3,000 = 2.8% ですが、YOC は 83 ÷ 1,000 = 8.3% です。取得原価が変わらないため、増配が続く限り YOC は上昇し続けます。
YOC の落とし穴
YOC が高いことは必ずしも良い投資判断を意味しません。最大の落とし穴は「機会費用の無視」です。先ほどの例で、保有株を 3,000 円で売却し、配当利回り 4% の別銘柄に乗り換えれば年間配当は 120 円になります。YOC 8.3% (年 83 円) に固執するより、乗り換えた方が配当収入は増えます。YOC は過去の意思決定の結果を映す指標であり、将来の最適な行動を示す指標ではありません。
また、株価が大幅に下落した銘柄でも、配当が維持されていれば YOC は高く見えます。取得原価 1,000 円の株が 500 円に下落し、配当 30 円が維持されていれば YOC は 3% のままですが、含み損 50% を抱えています。YOC だけを見て「良い投資だ」と判断するのは危険です。 配当投資の戦略書も参考になります
正しい活用法
YOC は「長期保有と増配の複合効果」を実感するためのモチベーション指標として有用です。ただし投資判断には、現在の配当利回り、配当性向、増配率、トータルリターンなど複数の指標を総合的に評価してください。YOC が高いからといって保有し続ける理由にはなりません。常に「今この資金を最も効率的に使う方法は何か」という視点を持つことが重要です。