TMV の基本情報と TMF との関係

TMV (Direxion Daily 20+ Year Treasury Bear 3X Shares) は、ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index の日次リターンの -3 倍に連動するインバース ETF である。経費率は 1.01%、Direxion が運用する。金利が上昇すると債券価格が下落し、TMV は利益を生む。

TMF (Direxion Daily 20+ Year Treasury Bull 3X) は同じ指数の +3 倍に連動するブル型で、金利低下局面で利益を生む。TMV と TMF は完全な鏡像関係にあり、一方が上昇すれば他方は下落する。

20 年超の長期国債デュレーション (金利感応度) が約 17 年と極めて高い。金利が 1% 上昇すると債券価格は約 -17% 下落し、TMV は +51% (= 3 × 17%) 上昇する計算だ。この高いデュレーションが、TMV を金利上昇局面での強力なツールにしている。

2022 年の金利上昇局面での TMV パフォーマンス

2022 年は FRB が政策金利を 0.25% から 4.50% まで急速に引き上げた歴史的な年だった。10 年国債利回りは 1.5% から 4.2% に上昇し、20 年超の長期国債指数は年間 -31% の壊滅的な下落を記録した。

TMV はこの環境で +100% 以上のリターンを記録した。理論上は 3 × 31% = +93% だが、金利上昇が一方向に進んだためボラティリティ減価が小さく、実際のリターンは理論値を上回った。一方、TMF は同期間で -73% の壊滅的な損失を被った。

2022 年の TMV は、インバース ETF が「正しく機能する」稀有な事例だ。通常、インバース ETF は長期で減価するが、ベース資産が一方向に大きく動く場合は、ボラティリティ減価よりトレンド方向の利益が上回る。2022 年の金利上昇はまさにそのような一方向トレンドだった。

債券のデュレーションとレバレッジの関係

長期国債のデュレーション 17 年は、金利 1% の変動で価格が 17% 動くことを意味する。これに 3 倍レバレッジをかけると、金利 1% の変動で TMV (または TMF) は 51% 動く。実質的に金利変動に対して 51 倍のレバレッジがかかっている計算だ。

この極端なレバレッジは、金利予測が正しければ巨大なリターンを生むが、間違えれば壊滅的な損失を招く。2023 年に金利が一時的に低下した局面では、TMV は数週間で -30% 以上下落した。

複利の観点では、デュレーション × レバレッジ倍率が実効的なボラティリティを決定する。TMV の日次ボラティリティは約 3-4% で、TQQQ の 4-5% に匹敵する。つまり、TMV のボラティリティ減価率は株式レバレッジ ETF と同程度であり、長期保有には同様の注意が必要だ。

金利予測に基づく TMF/TMV 切り替え戦略

TMF と TMV を金利予測に基づいて切り替える戦略は、理論的には魅力的だ。FRB が利上げサイクルに入れば TMV を保有し、利下げサイクルに入れば TMF に切り替える。金利サイクルは通常 2-3 年単位で動くため、切り替え頻度は低い。

しかし、金利の転換点を正確に予測することは極めて困難だ。2023 年には「年内利下げ」の予測が何度も裏切られ、TMF を早期に購入した投資家は大きな損失を被った。市場のコンセンサス予測が外れることは珍しくない。

より現実的なアプローチは、FRB の政策金利が実際に転換した後に切り替えることだ。転換点の「頭」は取れないが、サイクルの「胴体」を捉えることで十分なリターンが得られる。2022 年の利上げサイクルでは、最初の利上げ (3 月) から TMV を保有しても +80% 以上のリターンが得られた。

インバース債券 ETF が株式インバース ETF より「マシ」な理由

株式市場は長期的に上昇するため、株式インバース ETF (SQQQ、SPXS、TZA) は長期で確実に減価する。しかし債券市場は必ずしも長期上昇トレンドにない。金利が上昇トレンドにある期間は、債券価格は下落トレンドとなり、TMV はトレンド方向に利益を得る。

1980 年から 2020 年までの 40 年間は金利低下トレンドだったため、TMF (ブル) が有利で TMV (ベア) は不利だった。しかし 2022 年以降、金利が構造的に上昇する「新しいレジーム」に入った可能性が指摘されている。もしそうであれば、TMV は長期でもプラスリターンを生む可能性がある。

ただし、これは金利が今後も上昇し続けるという予測に依存する。金利予測は専門家でも頻繁に外すため、TMV の長期保有を正当化するには相当な確信が必要だ。不確実性が高い場合は、短期〜中期の保有に限定するのが賢明だ。債券投資の関連書籍で金利と債券価格の関係を体系的に学ぶことを推奨する。

現在の金利環境での投資判断

2024-2025 年の金利環境は、FRB の利下げ開始が焦点となっている。利下げが始まれば TMF が有利、金利が高止まりすれば TMV が有利だ。市場は利下げを織り込んでいるが、インフレの粘着性により利下げが遅れるリスクも残る。

TMV を検討する投資家は、以下のシナリオを想定すべきだ。インフレが再加速し FRB が追加利上げに追い込まれる場合、TMV は +50% 以上のリターンを生む可能性がある。逆に、景気後退により FRB が急速な利下げに転じれば、TMV は -50% 以上の損失を被る。

金利の方向性に確信が持てない場合、TMV も TMF も保有すべきではない。債券レバレッジ ETF は金利予測に対する「賭け」であり、予測が外れた場合の損失は 3 倍に増幅される。確信度に応じてポジションサイズを厳格に管理することが不可欠だ。

TMV 投資のまとめ

TMV は金利上昇に賭ける最も効率的なツールの一つだ。2022 年のように金利が一方向に大きく動く局面では、+100% 以上のリターンを生む。株式インバース ETF と異なり、金利上昇トレンドが続く限り長期でもプラスリターンの可能性がある。

しかし、金利予測の難しさを過小評価してはならない。FRB の政策転換、インフレ動向、景気サイクルなど、金利を決定する要因は複雑に絡み合う。TMV への投資は、金利に対する明確な見通しを持ち、その見通しが外れた場合の損失を許容できる投資家に限られる。

TMF と TMV の使い分けは、金利サイクルの理解に基づくべきだ。利上げサイクルでは TMV、利下げサイクルでは TMF。転換点では両方を避け、方向性が明確になってからポジションを取る。この規律が、債券レバレッジ ETF で生き残る鍵だ。