TZA の基本情報と TNA との関係
TZA (Direxion Daily Small Cap Bear 3X Shares) は、Russell 2000 指数の日次リターンの -3 倍に連動するインバース ETF である。経費率は 1.01%、Direxion が運用する。TNA (Direxion Daily Small Cap Bull 3X) の「鏡像」として、Russell 2000 が下落する局面で利益を生む。
Russell 2000 は米国小型株 2,000 銘柄で構成される指数で、S&P500 や NASDAQ100 と比較してボラティリティが高い。日次ボラティリティは約 1.3% (年率約 21%) で、S&P500 の 1.0% (年率 16%) を大きく上回る。このボラティリティの高さが、TZA の減価を加速させる。
TNA と TZA は同じ指数の 3 倍ブルと -3 倍ベアだが、長期リターンは全く対称ではない。TNA は長期で利益を生む可能性があるのに対し、TZA は長期で確実に減価する。この非対称性の数学的根拠を以下で解説する。
ブルとベアの非対称性 - 数学的証明
レバレッジ ETF の長期リターンは、ベース指数のリターン (μ) とボラティリティ (σ) から近似的に計算できる。ブル 3 倍の期待対数リターンは 3μ - 9σ²/2、ベア 3 倍の期待対数リターンは -3μ - 9σ²/2 である。
ここで決定的な違いが見える。ブル 3 倍は 3μ (トレンド方向の利益) から 9σ²/2 (ボラティリティ減価) を引いた値だ。μ > 0 (長期上昇トレンド) であれば、3μ > 9σ²/2 となる条件下でブル 3 倍は長期でプラスリターンを生む。
一方、ベア 3 倍は -3μ (トレンドに逆らう損失) と -9σ²/2 (ボラティリティ減価) の両方がマイナスだ。μ > 0 である限り、ベア 3 倍の期待リターンは常にマイナスとなる。トレンド損失と減価損失のダブルパンチにより、ベア型は数学的に長期保有が不可能な商品なのだ。
Russell 2000 の高ボラティリティがベア側に特に不利な理由
Russell 2000 の年率ボラティリティ 21% は、NASDAQ100 の 24% より低いが、S&P500 の 16% より高い。しかし、Russell 2000 の長期平均リターンは年 +7% 程度で、NASDAQ100 の +12% や S&P500 の +10% を下回る。
ブル 3 倍の観点では、リターン/ボラティリティ比 (シャープレシオ的な指標) が重要だ。Russell 2000 は μ/σ² = 0.07/0.044 = 1.59 で、S&P500 の 0.10/0.026 = 3.85 を大きく下回る。つまり、TNA は UPRO (S&P500 ブル 3 倍) と比較して、ボラティリティ減価に対するリターンの余裕が小さい。
ベア 3 倍の TZA にとっては、ボラティリティが高いほど減価が大きくなる。Russell 2000 の σ² = 0.044 に対し、9σ²/2 = 0.198、つまり年間約 -20% のボラティリティ減価が発生する。これにトレンド損失 -3μ = -21% を加えると、TZA の年間期待リターンは約 -41% となる。
具体的計算 - Russell 2000 が年 +10% の場合
Russell 2000 が年間 +10% のリターンを記録した場合を考える。TNA (ブル 3 倍) の理論リターンは 3 × 10% - ボラティリティ減価 = +30% - 約 20% = +10% 程度だ。ボラティリティ減価を差し引いても、プラスリターンを維持できる。
一方、TZA (ベア 3 倍) の理論リターンは -3 × 10% - ボラティリティ減価 = -30% - 約 20% = -50% だ。Russell 2000 が +10% 上昇しただけで、TZA は半値になる。これが 2 年続けば -75%、3 年続けば -87.5% の損失となる。
実際のデータでも、TZA の設定来 (2008 年) からの累積リターンは -99.99% を超えている。100 万円が 100 円以下になった計算だ。一方、TNA は同期間で +500% 以上のリターンを記録している (ただし途中の最大ドローダウンは -99%)。この非対称性が、ブルとベアの根本的な違いだ。
TZA の正しい使い方 - 超短期のみ
TZA が利益を生むのは、Russell 2000 が短期間に急落する局面に限られる。小型株は大型株より暴落時の下落幅が大きい傾向があり、2020 年 3 月には Russell 2000 が -40% 以上下落した。この期間、TZA は +100% 以上のリターンを記録した。
しかし、小型株の回復も急速だ。2020 年 3 月の底値から 2021 年 3 月までの 1 年間で Russell 2000 は +100% 以上反発し、TZA は -95% の損失を被った。暴落時に TZA で利益を得ても、手仕舞いのタイミングを逃せば全て失う。
TZA の保有期間は最長でも 1-2 週間に限定すべきだ。Russell 2000 のボラティリティが高いため、SQQQ や SPXS よりもさらに減価が速い。1 ヶ月保有するだけで -10% 以上の減価が見込まれる。投資の数学に関する書籍で複利とボラティリティの関係を深く理解することが、レバレッジ ETF 投資の前提条件だ。
ブルとベアを同時に持つと何が起きるか
TNA と TZA を同額ずつ保有した場合、直感的にはネットポジションがゼロで損益も±0 になると思うかもしれない。しかし実際には、両方がボラティリティ減価で目減りするため、合計資産は確実に減少する。
具体的に計算する。Russell 2000 が +2% の日、TNA は +6%、TZA は -6%。各 100 万円保有していれば、TNA = 106 万円、TZA = 94 万円、合計 200 万円で変わらない。翌日 Russell 2000 が -2% なら、TNA = 106 × 0.94 = 99.64 万円、TZA = 94 × 1.06 = 99.64 万円、合計 199.28 万円。2 日で -0.36% の損失だ。
この損失は日々累積する。年間では合計資産の約 -20% が消失する計算だ。ブルとベアの同時保有は「ヘッジ」ではなく「確実な資産減少」を意味する。ヘッジが必要なら、ポジションサイズの縮小か現金化が正解だ。
TZA 投資の結論と教訓
TZA は、レバレッジ ETF のブルとベアの非対称性を最も極端に体現する商品だ。同じ Russell 2000 の 3 倍でも、TNA は長期で利益を生む可能性があるのに対し、TZA は数学的に長期保有が不可能である。
この非対称性の根源は、株式市場が長期的に上昇するという事実にある。上昇トレンドに順張りするブル型は、ボラティリティ減価を上回るリターンを得られる可能性がある。逆張りするベア型は、トレンド損失と減価損失の二重苦に苦しむ。
TZA を使う唯一の合理的な場面は、小型株の急落を確信し、数日以内に手仕舞いできる短期トレードだ。それ以外のすべての使い方は、複利の数学に反する。