ムーアの法則を複利の数式で表現する
1965 年、インテルの共同創業者ゴードン・ムーアは「集積回路上のトランジスタ数は約 2 年ごとに倍増する」と予測しました。この予測は「ムーアの法則」として知られ、半導体産業の指針となってきました。複利の数式で表現すると、2 年で 2 倍ということは年間成長率 r は (2)^(1/2) - 1 ≒ 0.414、つまり年利約 41.4% に相当します。
年利 41.4% がいかに驚異的かを、金融の世界と比較してみましょう。S&P 500 の長期平均リターンは年約 10% です。ウォーレン・バフェットの生涯リターンは年約 20% です。ムーアの法則の成長率 41.4% は、バフェットの 2 倍以上です。1971 年のインテル 4004 プロセッサのトランジスタ数は 2,300 個でした。2024 年の Apple M4 チップは約 280 億個です。53 年間で約 1,217 万倍。これを複利で計算すると、年利約 38% で 53 年間運用した結果に相当します。
ムーアの法則が生んだ「性能の複利」
ムーアの法則の本質は、トランジスタ数の増加だけではありません。トランジスタが小さくなると、消費電力が下がり、動作速度が上がり、製造コストが下がります。つまり、「同じ価格でより高性能なチップが手に入る」という形で、消費者は毎年「性能の複利」を享受してきたのです。
具体的な数字で見てみましょう。1980 年に 1 ギガフロップス (10 億回の浮動小数点演算/秒) の計算能力を得るには約 3,200 万ドルかかりました。2020 年には同じ計算能力が約 0.03 ドルで手に入ります。40 年間で価格が約 10 億分の 1 に下落しました。年率に換算すると約 52% の価格下落です。あなたのスマートフォンは、1980 年代のスーパーコンピュータを遥かに超える計算能力を持っています。これはムーアの法則という「テクノロジーの複利」が 40 年間積み重なった結果です。
法則の限界 - 物理法則が複利を止める日
ムーアの法則は永遠には続きません。トランジスタの微細化は原子のサイズという物理的限界に近づいています。2024 年時点の最先端プロセスは 3 ナノメートルで、シリコン原子の直径 (約 0.2 ナノメートル) の 15 倍程度です。これ以上微細化すると、量子トンネル効果によって電子がゲートを透過してしまい、トランジスタとして機能しなくなります。
実際、ムーアの法則の「倍増周期」は近年延びています。2000 年代までは約 2 年で倍増していましたが、2010 年代以降は 2.5〜3 年に延びたとする分析もあります。年利 41% が年利 26〜32% に低下した計算です。それでも驚異的な成長率ですが、「指数関数的成長はいつか鈍化する」という普遍的な法則がここにも当てはまります。投資の世界でも、高成長企業の成長率はいずれ鈍化します。ムーアの法則の減速は、指数関数的成長の限界を示す壮大な実例です。半導体産業の解説書を読むと、ムーアの法則の技術的背景がより深く理解できます。
テクノロジーの複利を投資に活かすネクストアクション
ムーアの法則が投資家に教える教訓は 2 つあります。第一に、テクノロジーの指数関数的進化は、それを活用する企業の収益を指数関数的に押し上げる可能性があるということです。クラウドコンピューティング、AI、自動運転など、計算能力の向上が直接的に価値を生む分野は、ムーアの法則の恩恵を最も受けます。第二に、指数関数的成長には必ず限界があるということです。成長率の鈍化を見極め、成長株から成熟株への転換点を判断する力が、長期投資のリターンを左右します。自分のポートフォリオに含まれるテクノロジー企業の成長率が鈍化していないか、定期的に確認してみてください。